ミッションステートメント(使命の宣言)– Mission Statement –

ミッションステートメント(使命の宣言)

 私たちは、それぞれの保育所や認定こども園に通う子どもたちが、自分自身を受けとめ、人を信頼し、共に生きようとする人に育ってほしいと願っています。

 神さまがすでに子どもたちを愛し、成長させてくださるのですが、「神さまがいつも側にいてくださる」「生まれてきてよかった」「人は信頼できる」と信じる大人との出会いの中で、子どもたちにもその心はより確実に育つと信じています。

 私たち保育者自身が、自らの保育を振り返り、気づきを大切にしながら、子どもとともに成長できるような実践を模索していきたいと思います。

「いのち・人権・平和」

いのち 神さまから与えられたいのち

 私たちは、神さまが創られたそれぞれの「いのち」を生きています。その「いのち」は、神さまが与えられたものであるがゆえに尊いものです。私たちは、それぞれの固有の意味を持った尊い「いのち」を生きているのです。

  • 神さまから愛され、大切にされていることを感じ、自己肯定感が育まれ、生きる力が育つ保育
  • すべてのいのちも、神さまから愛され、大切にされていることを知り、共に生かされ、成長する保育
  • 神さまの愛と恵みに感謝し、祈りの中で信じる心が育つ保育

人 権 神さまから与えられたいのちへの尊厳

 神さまから与えられた「いのち」を尊び、尊ばれることが「人権」です。「いのち」の多様性とかけがえのなさを共感し、他者と共に生きるよう創られているのです。

  • 神さまから与えられた賜物を自ら受け入れ、自己表現しながら、人を信頼する心が育つ保育
  • すべてのもののいのちの尊さに気づき、小さくされ、弱くされているものに寄り添う感性が育つ保育
  • 神さまのいのちに対するまなざしに気づき、神さまに従っていこうとする心が育つ保育

平 和 神さまから与えられたいのちを尊び、共に生きる

 「いのち」の多様性、違いを認め合いながら、共に生きていくことを喜びとして成長し、創り出していくものが「平和」です。

  • 神さまから示された平和を実現するために、自らも差別する者であることを自覚しながら、共に生きようとする力が育つ保育
  • すべてのものは神さまが創られたことを知り、違いを認め喜びとして分かち合い、共に平和を創り出そうとする心が育つ保育
  • 神さまの創られた広い世界に思いを馳せ、神の国を実現するために、与えられた賜物を活かし、他者と共に生きることを祈り求める保育

「ここには神さまがいます」

 私たちは、日本キリスト教保育所同盟の加盟園です。目に見えない神さまを信じ、神さまから与えられた出会いに感謝し、聖書の言葉に心をかたむけながら、「神の国(神さまから祝福された状態)」を実現すべく、祈りながら保育をすすめていきます。

「ミッションステートメント(使命の宣言)」作成について

 戦後から高度経済成長を経て、時代はグローバル社会へと変化しました。子どもたちを取り巻く状況や課題も変化し、2015年度より「子ども・子育て支援新制度」として新たな保育制度となった現代は、子育ち・子育てのあり方がますます複雑、困難な状況になりつつあると言えます。子どもたちの育つ場を提供し、保護者の思いに寄り添いながら、変わるべきものと変わってはいけないものを見据える時、この「いのち・人権・平和」のキーワードは、私たちにたくさんの示唆を与えてくれると再認識致しました。

 2013年5月の総会において、キリスト教保育の視点を明確にしていきたいとの本部提案がなされ、委員を選任し「保育研究会」を発足しました。研究会では2年間9回の検討会を開催し、キ保同設立より一貫して変わらない理念である、「いのち・人権・平和」をキーワードに「ミッションステートメント」としてまとめることに致しました。
「日本キリスト教保育所同盟 ミッションステートメント」が乳幼児の最善の利益を考慮し、福祉を増進できる保育実践と、キリスト教保育の指針となることを心より願うものです。

「日本キリスト教保育所同盟加盟園が目指す保育」

 私たちは、それぞれの保育所や認定こども園に通う子どもたちが、自分自身を受けとめ、人を信頼し、共に生きようとする人に育ってほしいと願っています。神さまがすでに子どもたちを愛し、成長させてくださるのですが、「神さまがいつも側にいてくださる」「生まれてきてよかった」「人は信頼できる」と信じる大人との出会いの中で、子どもたちにもその心はより確実に育つと信じています。私たち保育者自身が、自らの保育を振り返り、気づきを大切にしながら、子どもとともに成長できるような実践を模索していきたいと思います。

「ここには神さまがいます」

 日本キリスト教保育所同盟(以下「キ保同」)は、1952年に設立され、「基督教保育所従事者講習会」を開催、1959年に「夏季保育大学」と名称を変更し、職員の研修を中心に活動してきました。2008年、第50回記念夏季保育大学では、「いのち・人権・平和」と主題を定めました。夏季保育大学の歩みの中で、「いのちの大切さ」や「人権」「平和教育」等のテーマが多く設定されていたからです。

 目に見えない神さまを信じ、神さまから与えられた出会いに感謝し、聖書の言葉に心をかたむけながら、「神の国(神様から祝福された状態)」を実現すべく、祈りながら保育をすすめていきたいと願っています。

小さな解説書

(1)ミッションステートメントの作成過程

 当初、「乳児より積み重ねられた幼児」という観点から、「乳児保育指針」をまとめるべく、「乳児保育研究会」を立ち上げました。しかし、乳児と幼児を分けて考えるのではなく「0才から就学前までの一貫した保育」としてとらえ、さらにキリスト教保育の視点をより明確にしていきたいとの思いから、「保育研究会」と名称変更し、日本キリスト教保育所同盟(以下「キ保同」)としての保育を問う作業が始まりました。

 キ保同加盟園の保育は、他の園と、どこがどのように違うのでしょうか。たとえば「一人ひとりを大切にする保育」というフレーズは、仏教の園でも、無宗教の園でも使われている大切な保育の内容です。これは「保育所保育指針」ですでに述べられている視点だからです。

 キ保同加盟園は日本中に点在しています。地域が違えば課題が違うことも見えてきました。また、それぞれの園で「理念」や「方針」「目標」があることも当然であり、保育の方法も様々です。各園の課題や思いを列挙し文章でまとめるのは困難であることや、分厚い冊子にする必要性が無いことも確認しました。

 その中で、2008年の第50回記念夏季保育大学での「いのち・人権・平和」という主題がキーワードではないかという視点から、キ保同が「目指す保育」「実現したい保育」「考える保育」とは何なのかについて意見交換し、「保育への提言」としてまとめるという方向が定まりました。「いのち」とは何か、「人権」とは何か、「平和」とは何かという議論の始まりでした。

  • 「いのち」がスタートではないか、神さまから与えられたいのちは皆平等であるはず。
  • 「人権」は個で守られるもの、子どもについては大人が守るものではないか。
  • 「平和」は人との関係性を示す内容で、一人だけの存在で平和であるということは言えないのではないか。
  • 「いのち」が人として尊ばれていないから「人権」が必要になるのではないか。
  • 「人権」とは「いのちへの尊厳」と言い換えられると思う。
  • 人々がお互いを尊び認め合う世界が「平和」なのではないか。

 研究会での話し合いは、子どもたちへの願いや保護者への思い、そして保育者としての祈りなどが生き生きと語られ、その中心に必ず神さまがいることを実感してきました。委員だけで語るのではなく、本部や地区の研修会でも、このことをテーマとしてとらえることとなり、パネルディスカッションやKJ法1を使い、様々に意見を聴取しました。

 これらを元に、さらに議論と推敲を重ねできあがったのが「日本キリスト教保育所同盟 ミッションステートメント(使命の宣言)」です。

  1. KJ法:文化人類学者の川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法 ↩︎

(2)ミッションステートメントの成り立ち

 「いのち」「人権」「平和」について、それぞれリード文がつけられています。これはそれぞれの単語が持つ意味を示しています。併せて、理解の仕方も簡単に説明しています。その上で、キ保同が目指す保育、大切にしたいと考える保育を記載しています。

 一つ目は、自ら(子ども・保護者・職員)が付けていく力を育むことを目的とした保育内容

  • (いのち) 神さまから愛され、大切にされていることを感じ、自己肯定感が育まれ、生きる力が育つ保育
  • (人 権) 神さまから与えられた賜物を自ら受け入れ、自己表現しながら、人を信頼する心が育つ保育
  • (平 和) 神さまから示された平和を実現するために、自らも差別する者であることを自覚しながら、共に生きようとする力が育つ保育

 二つ目は、他者と共に生きていく力を育むことを目的とした保育内容

  • (いのち) すべてのいのちも、神さまから愛され、大切にされていることを知り、共に生かされ、成長する保育
  • (人 権) すべてのもののいのちの尊さに気づき、小さくされ、弱くされているものに寄り添う感性が育つ保育
  • (平 和) すべてのものは神さまが創られたことを知り、違いを認め喜びとして分かち合い、共に平和を創り出そうとする心が育つ保育

 三つ目は、神さまへの応答につながる力を育むことを目的とした保育内容

  • (いのち) 神さまの愛と恵みに感謝し、祈りの中で信じる心が育つ保育
  • (人 権) 神さまのいのちに対するまなざしに気づき、神さまに従っていこうとする心が育つ保育
  • (平 和) 神さまの創られた広い世界に思いを馳せ、神の国を実現するために、与えられた賜物を活かし、他者と共に生きることを祈り求める保育

 これらは子どもへの願いであり、保護者への思いであり、保育者としての祈りでもあります。
また、このキーワードだけでは語れない根っことも言うべき、下支えの思いがあります。それは、神さまがいつもそばにいて、私たちを愛してくださっているということ、聖書の言葉に聞いていくこと、神さまから祝福された「神の国」を創っていくために祈ることです。これらは、ミッションステートメントの前文としてまとめています。

 ミッションステートメントを活用いただき、それぞれの園の「方針」や「目標」理解の一助としていただければ幸いです。

(3)「いのち・人権・平和」の関係性の考え方

キ保同が目指す保育、大切にしたい保育を「いのち・人権・平和」を軸に議論や研修会をする中で、「いのち」「人権」「平和」は実に様々な関係図で考えられてきました。「いのち」が根底で、その上に「人権」があり、またその上に「平和」があるとする考え方(図1)、「いのち」と「人権」と「平和」は3つの円で描かれ、その三者はお互いに交わっており、その中央に「子ども」がいる(図2)という考え方もありました。更に、「いのち」は木の幹で、「人権」という枝が伸び、葉が茂っており、もう一方で「平和」という枝があり葉が茂っている。そしてその双方の葉はお互いに重なる部分がある(図3)という関係図になったものもあります。その他様々な考え方(図4、図5等)がありました。「いのち」「人権」「平和」の関係性については、それぞれの園の独自性を大切にして、作りあげていただければと考えています。

(4)理念・方針・目標との連携方法、聖句との考え方

 前述のように、「いのち」「人権」「平和」は様々な示唆を与えてくれるキーワードです。各園でこのキーワードを考える機会をご検討ください。その際、ミッションステートメントのうち、自園ではこの部分を特に重要にとらえているとか、これを具体化したものを目標とする等、自園の理念・方針・目標と関連するワードを探し、ご活用いただければ幸いです。

 また、これらに関わる「聖句」を様々に選んでいただき、保育や研修等、様々に活用していただくことを願っています。

(5)今後の進め方

 ミッションステートメントのみで保育の実践が充実する訳ではありません。具体的な保育実践があってこそ、ミッションステートメントにいのちが吹き込まれます。

 保育実践をエンパワーメントするために機関誌「山びこ」に、エピソードを連載していくことを予定しています。エピソードは加盟園の中から公募し、順次掲載していく予定です。具体的には、下記のように考えています。

1.キーワード (「いのち」「人権」「平和」から選択する)
2.園名地区名氏名
3.エピソード
  「題名」
    〇〇〇
  「背景」
   〇〇〇〇・・・・
  「エピソード」
    〇〇〇〇・・・・
    〇〇〇〇・・・・
  「考察」
    〇〇〇〇・・・・
4.聖書の箇所 (合致する聖書の箇所を選択する)

 エピソード記述は保育の質を向上させるために、とても優れた省察方法だと考えています。うまくいったと思うエピソードだけではなく、保育者にとって学びとなるエピソードを読み合うことで、お互いの保育の質の向上を図っていきたいと思います。

下記よりPDFもご用意しています。ぜひダウンロードしてください